JigmeThinley
1952年ブータン生まれ。
インドのデリー大学セント・ステファン・カレッジで学士取得、その後米国のペンシルヴァニア州立大学にてMPAを取得。
ティンレー氏は、ブータンで初めて民間より選出された首相である。2008年の総選挙でブータン調和党を率いて47議席中45議席を獲得し圧勝した。それ以前にも外務大臣や内務文化大臣を務めた経歴を持つ。
また、ティンレー氏は、広い分野において随筆や論文を出版しており、国連総会をはじめ、多数の講演やセミナーなどを行っている。彼は、国王による開発政策の概念である「国民総幸福量」の強い主唱者であり、国内外での講演においてそのことを語ることが多い。
ティンレー氏は、環境保護にもかかわっており、ブータンの学校で環境に関する講義を展開しながら、各学校長に「ゴミのない緑の学校」となるよう公約をさせ続けている。現在、国立環境委員会の会長および、ウゲン・ワンチュク環境保全協会(UWICE)の会長を務めている。
2009年にはブータン国王より民間人の最高の勲章であるメダルを授与された。また、その他近年でも数多くの賞を受賞している。
28日、UIA2011東京大会の基調講演の中で、Thinley氏
の講演テーマは「サスティナブルな幸福な社会のための建築」
ティンレー首相は、現代社会を「物質的な繁栄ばかりを追及し、浅はかな夢の実現のためにつくってきた『市場経済』を、人間がコントロールできなくなっている。数カ月後さえ誰も予想できない状況だ」と述べ、「GDPやGNPが高い先進国でも、自分が本当に幸せだと感じられる人はほとんどいない」と批判。
東日本大震災に触れ、「想像を絶する災害に直面し、これまで信じていた『富』が何の役にも立たなかったと気付いた今こそ、社会・経済・生活を変えなければならない」と訴えた。
ティンレー首相が提唱するGNHの目的は、
1:公平で持続可能な社会経済の発展
2:脆弱な生態系の保全
3:人間の基本的価値の向上
4:文化の尊重―など。
「真の富とは、困難な時に役立つ、文化や文明、人が尊厳を持って死ぬためのもの」
「自分は沢山の人とつながっていて、なんて豊かなんだろう。」と。
建築家について「空間のデザインだけでなく、人々の生活・人生をデザインし、社会を規制する偉業を行っている」と評価した。その上で、「建築やまちづくりの中で、経済性ではなく、幸せの追求のために何ができるか、次世代に何を伝えられるかを考えながら進めてほしい」とを訴えた。
具体的に、幸せを追求するために建築家として何ができるか
■今世界人口は80億あまり。2050年には90億に達するが、建築家にできることは
■建築物の構造・規模・外観を通して何を伝えれば良いのか
■建築にその集合体に調和が取れているかを考慮していますか
■あなたがたは本当の意味で『美』を創出できますか
■世代を超えて、人と人をむすぶのに、建築家にできることは
■あなた方はクライアントにたいして、サスティナブルということをどういうふうに
説得するのか
■あなた方のするデザインは、どのように環境に寄与できますか具体的な実践は
■建築を構成する材料から、考え直せますか
■人工的なものは最小にするためにはどのようにしたらと考えますか
■道、街路のデザイン、交通の再構築に何か考えはありますか
■便利さとはなんですか、本来の意味を建築に具現化することを考えたことが
■原子力発電を、あなた方建築家は、2050年までにどうするか考えがありますか
■先人からの智恵を尊重していますか。
■農業として成立するもの以外に庭や屋上、窓際で野菜を作ることの可能性は
■作った野菜を消費者まで運ぶ距離を短くすることはエコにつながるのでは
■若きを愛し、老いをうやまう建築とはなにかという視点は考えたことがあるか
■あなた方のやわらかい子宮から、なにが生み出せますか
哲学的ですね。
最後に「われわれの世代が、人類の危機を救う舵取りをしたと、次世代の人々から思われる取り組みをしてほしい」と述べた。
Today'sCD
Bruckner: Symphony No. 7 [Hybrid SACD - DSD]
Orchestre de la Suisse Romande